講座詳細

日本伝統文化に見るマンガ・アニメ的なるもの 
その独自の発達と日本語

C1550100

講座趣旨

三鷹ネットワーク大学10周年記念企画講座/三鷹の森ジブリ美術館協力
アニメーション文化講座 特別編
日本伝統文化に見るマンガ・アニメ的なるもの
             ―その独自の発達と日本語―


 日本には、絵と言葉を使って、時間とともに、ありありと物語を語る芸術が数多く残っている。玉虫厨子の表面に描かれた釈迦の本生譚にはじまり、平安時代から中世にかけての絵巻物、江戸時代の刊本絵本類、影絵芝居、さらには明治以後の紙芝居に至るまで、おびただしい数のマンガ・アニメの先駆的な作品がある。これらは、字の読めない人々への布教のための絵ではなく、識字層のために描かれ、彼らによって楽しまれたものである。識字率の高まりとともにマンガ・アニメ的なものの普及も広がる。なぜだろうか。
 マンガ・アニメ的なるものが頂点に達した時期は、平安末期と江戸末期と戦後である。これらの時期に共通する特徴は何だろうか。
 本講座では、具体的に第一の頂点である平安末期の絵巻物の魅力を味わうところからはじめ、日本語という言語と、マンガ・アニメ的な絵との関係や、「本質」より「現象」に強い関心を示す日本人の心性にも探りを入れてみたい。

【第1回:10月9日】
日本人はアリスの同類だった
アリスは姉の読んでいる書物をのぞき込んで言う。
「絵も会話もない本なんて、何の役に立つのかしら?」

○日本では平安の昔から連綿と、おびただしい数の「マンガ・アニメなるもの」が作られてきた。「マンガ・アニメ的なるもの」とは、「絵と言葉を使って、時間とともに、ありありと物語を語る芸術」のことである。
○史上、三度のピークがあった。平安末期と江戸末期と戦後である。この時期に共通する特徴とは何か。

【第2回:10月16日】
手の中の映画 連続式絵巻
○画集では絶対味わえない絵巻物の魅力。どのようにして絵の中に「時間」を取り込んだか、その驚くべき表現技法。
○世界の他地域での試みとの違い。
○一瞬の現象を生き生きと捉える。本質より現象に強い関心を抱く日本文化の特徴。東西の辞書の比較。

【第3回:10月23日】
草双紙絵で筋を読む炬燵かな(松根東洋城)
○江戸時代における多様多彩な展開。浮世絵に溢れる情報。毎ページが絵と言葉で埋め尽くされた絵本類(草双紙)の大量出版。
○西洋への大きな影響。それがまわりまわってジブリアニメにまで至る。
○主観性の導入。正面性。 ○線の絵の意味。 
○陰影・立体感。

【第4回:10月30日】
なぜ日本では「マンガ・アニメ的なるもの」が発達したのだろうか ―日本文化論―
○万葉から現代まで連綿と続く「文字と言葉の戯れ」。花開いた素晴らしき“駄洒落文化”。 
○漢字受容の日本的特質。大和言葉と漢字の共存。識字層の文化。
○本質より現象。永遠より一瞬。特異な名付け。オノマトペ。
○「永遠」には関心を示さない。災害列島の庶民的無常観。

講座概要

講座日程 2015年10月 9日 (金)
 〜2015年10月30日 (金)
時間 下記をご確認ください。
定員 50 人 (先着制)
回数 4回 通し受講のみ
受講料 一     般 3,000 円
市     民 2,400 円
市民在勤・在学 2,400 円
市 民 学 生 1,800 円
会     員 1,500 円
難易度 ★★☆
会 場 下記をご確認ください。
受付期間

※スクロールしてご確認ください→

日程 開催時間 会場 担当講師
第1回
10月 9日
19時00分〜20時30分 三鷹ネットワーク大学 高畑 勲 アニメーション映画監督
第2回
10月16日
19時00分〜20時30分 三鷹ネットワーク大学      同上
第3回
10月23日
19時00分〜20時30分 三鷹ネットワーク大学      同上
第4回
10月30日
19時00分〜20時30分 三鷹ネットワーク大学      同上

講師

高畑 勲(タカハタ イサオ) アニメーション映画監督
 1935年、三重県伊勢市に生まれ、岡山で育つ。59年に東京大学仏文科卒業後、東映動画へ入社。テレビ「狼少年ケン」で初演出。劇場用映画「太陽の王子ホルスの大冒険」(68)で初監督。以後、「アルプスの少女ハイジ」(74)、「母をたずねて三千里」(76)、「赤毛のアン」(79)(以上、TV演出)、「セロ弾きのゴーシュ」(82)、「じゃりン子チエ」(81)、「火垂るの墓」(88)、「おもひでぽろぽろ」(91)、「平成狸合戦ぽんぽこ」(94)、「ホーホケキョとなりの山田くん」(99)を発表。2013年には待望の最新作「かぐや姫の物語」が公開され、毎日映画コンクールアニメーション映画賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞(アニメーション映画部門)等を受賞し、15年同作品は第87回 米国アカデミー賞長編アニメーション映画部門賞にノミネートされた。
 「風の谷のナウシカ」(1984)、「天空の城ラピュタ」(86)をプロデュース。他に、スタジオジブリの洋画アニメーション提供作品として「キリクと魔女」(ミッシェル・オスロ監督)の日本語版翻訳・演出(2003)、「王と鳥」(ポール・グリモー監督、ジャック・プレヴェール脚本)の日本語字幕翻訳(06)、三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー提供作品「アズールとアスマール」(ミッシェル・オスロ監督)の日本語版翻訳・演出(07)も手がける。
 著作に『映画を作りながら考えたこと』『十二世紀のアニメーション』(以上徳間書店刊)、『ジャック・プレヴェール ことばたち』(ぴあ刊、訳および解説と注解)、『ジャック・プレヴェール 鳥への挨拶』(ぴあ刊、編・訳)、『一枚の絵から/日本編』『一枚の絵から/海外編』『アニメーション、折りにふれて』(いずれも岩波書店刊)がある。
 1998年、紫綬褒章を受章。2009年にはロカルノ国際映画祭で名誉豹賞を受賞。10年にはアニメアワード功労賞、12年には米・ロードアイランドスクールオブデザイン(RISD)名誉博士号、14年には東京アニメアワードフェスティバル2014特別賞・アニメドール、アヌシー国際アニメーション映画祭名誉功労賞(Cristal d’honneur)を受賞。15年4月には、フランス芸術文化勲章オフィシエを受章した。

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