講座詳細

アニメーション文化講座 アニメーションの見方を学ぼう
〜受け継がれる制作者たちの志〜

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講座趣旨

 日本のアニメーションは、1917年、3人の作家、下川凹天、幸内純一、北山清太郎によって始まったと言われています。その後、政岡憲三が、ディズニーなど海外のアニメーション技法を研究しながら、日本における本格的なセルアニメーションの制作を開始します。戦後になって政岡は日動映画を立ち上げましたが、後に東映動画に吸収され、その技術や理論の一部は制作スタッフとともに東映動画に引き継がれました。しかし、テレビアニメーションが量産されるようになると、政岡が追い求めた技術や理論の多くは必要とされませんでした。主観的で感情移入型の演出方法が発展した日本のアニメーションにおいては、動きよりも、ストーリー展開のほうが重要視されたからかもしれません。
 高畑勲や宮崎駿は東映動画の出身であり、本来であれば伝統的な技術の多くを引き継いで、時間や予算が許せばやりたかったことがたくさんあったはずです。しかしそれが許されなかったことから、試行錯誤の末、新たな技術や表現を生み出したといいます。それは伝統的な表現方法を理想としながらも、現状の中でやれる最大のことに挑戦したといえるでしょう。そしてその精神は、間違いなく政岡から受け継がれたものなのです。こうして受け継がれてきた制作者たちの志とはいかなるものなのでしょうか?
 現在、多種多様なアニメーションが作られるようになり、ますます広がってきたアニメーションの技術や表現方法の中で、政岡憲三をルーツとし、東映動画からスタジオジブリに至るアニメーション制作の歴史の中では、具体的にどのような技術的・表現的発明があり、制作現場ではどのようなことが重要視されてきたのでしょうか?
 この講座では、制作現場で活躍してきた当事者や制作者たちの声をたくさん聞いてきた講師陣の証言によって、その一端を紐解き、アニメーション表現の真髄と面白さの秘密を探っていきたいと思います。

【第1回】アニメーション表現の基礎と制作者の志
 数々のスタジオジブリ作品で作画監督をつとめ、現在はスタジオポノックで活躍する講師による、アニメーション技術の基礎講座。上手なアニメーションにはどのような秘密があるのでしょうか? 脈々と受け継がれてきた技術と精神を、制作者自身の視点で紐解きます。

【第2回】高畑勲・宮崎駿両監督作品の現場から(1)
 「セロ弾きのゴーシュ」「アルプスの少女ハイジ」「未来少年コナン」等数々の作品で原画を担当してきた講師が語る証言。高畑・宮崎両監督の初期作品における貴重なエピソードを交えながら、当時の制作現場ではどのようなことが大切にされ、その後のアニメーションに引き継がれていったのかを探ります。

【第3回】高畑勲・宮崎駿両監督作品の現場から(2)
 「世界名作劇場」や初期スタジオジブリ作品で作画監督を担当するなど、テレビアニメから劇場用アニメ、ゲーム作品に至るまで様々な作品に携わってきた講師が、高畑・宮崎両監督の制作現場のエピソードを通して、創作の秘密を語ります。聞き手は、アニメCMのプロデューサー釘宮陽一郎です。

【第4回】総括およびアニメーションの現在と未来
 映像研究家として、多くのアニメーション制作者の証言を収集してきた講師によるまとめ。高畑勲、宮崎駿ら一群の制作者たちは、手間を惜しまない東映動画(現東映アニメーション)制作の長編を起点として出発しました。その技術思想や表現様式は、省力化を前提としたテレビシリーズ制作の中でどのような変遷をたどり、何を継承・発展させて来たのか。1970年代を中心に現在に至る流れの俯瞰を試みます。

 

講座概要

講座日程 2018年 1月12日 (金)
 〜2018年 2月 2日 (金)
時間 下記をご確認ください。
定員 50 人 (先着制)
回数 4回 通し受講のみ
受講料 一     般 3,000 円
市     民 2,400 円
市民在勤・在学 2,400 円
市 民 学 生 1,800 円
会     員 1,500 円
難易度 ★★☆
会 場 下記をご確認ください。
受付期間 12月5日(火)午前9時30分より

※スクロールしてご確認ください→

日程 開催時間 会場 担当講師 内容
第1回
1月12日
19時00分〜20時30分 三鷹ネットワーク大学 稲村 武志 アニメーター・作画監督 アニメーション表現の基礎と制作者の志
第2回
1月19日
19時00分〜20時30分 三鷹ネットワーク大学 才田 俊次 アニメーター・作画監督 高畑勲・宮崎駿両監督作品の現場から(1)
第3回
1月26日
19時00分〜20時30分 三鷹ネットワーク大学 佐藤 好春 アニメーター・キャラクターデザイナー・
作画監督(アートディレクター)
高畑勲・宮崎駿両監督作品の現場から(2)
第4回
2月 2日
19時00分〜20時30分 三鷹ネットワーク大学 叶 精二 映像研究家・フリーライター 総括およびアニメーションの現在と未来

講師

稲村 武志(いなむら たけし) アニメーター・作画監督
 シンエイ動画で動画・動画チェックを担当。1991年にスタジオジブリへ入社後、数々のジブリ作品で原画、作画監督等を手がけ、フリー経て、スタジオポノックへ。主な作品として、「ホーホケキョ となりの山田くん」(99年)、「千と千尋の神隠し」(01年)、「猫の恩返し」(02年)、「借りぐらしのアリエッティ」(10年)、「風立ちぬ」(13年)など、数々のジブリ作品で原画を担当。「崖の上のポニョ」(08年)、「思い出のマーニー」(14年)で作画監督補、「ハウルの動く城」(04年)、「ゲド戦記」(06年)、「コクリコ坂から」(11年)では作画監督を務めた。その他に、三鷹の森ジブリ美術館オリジナル短編作品「くじらとり」(01年)、「たからさがし」(11年)の演出アニメーターとして携わる。ジブリ退社後は、「バケモノの子」(15年)、「君の名は。」(16年)等の作品に原画で参加。「メアリと魔女の花」(17年)では作画監督を務めた。
才田 俊次(さいだ としつぐ) アニメーター・作画監督
 1949年7月5日熊本県山鹿市生まれ。漫画家を目指して上京した後、撮影、彩色(東映動画長編「長靴をはいた猫」他)のアルバイトを経て、70年杉並区の作画下請け会社オープロダクションに入社。同社の小松原一男、村田耕一に師事する。小松原と組んだ「タイガーマスク」(69年)の原画で頭角を現し、以後劇画タッチの作品から世界名作シリーズなどのソフトなタッチまで幅広い作品をこなす。高畑勲、宮崎駿、小田部羊一らが主導した作品、「アルプスの少女ハイジ」(74年)、「母をたずねて三千里」(76年)で原画を担当。「小公女セーラ」(85年)ではキャラクターデザイン&作画監督。高畑勲監督の長編「セロ弾きのゴーシュ」(82年)では原画の全てを一人で作画した。現在も「ちびまる子ちゃん」(90年〜)の作画監督として活躍しつつ、オープロダクション取締役、東京工芸大学芸術学部講師として後進の指導にあたっている。
佐藤 好春(さとう よしはる) アニメーター・キャラクターデザイナー・作画監督(アートディレクター)
 1958年5月15日横浜生まれ。「となりのトトロ」(88年)で作画監督、「おもひでぽろぽろ」(91年)で作画監督補佐を務めるなど、数多くのスタジオジブリ作品に参加。世界名作劇場シリーズでは、キャラクターデザイン、作画監督を担当する他、アートディレクターとして多くのゲーム作品も手がけている。近年では、2015年公開の劇場映画「シンドバット」の作画監督、キャラクターデザイナーを務める他、釘宮陽一郎と企画を組み、劇場用短編映画、プロモーションCMを多数制作している。
叶 精二(かのう せいじ) 映像研究家・フリーライター
 早稲田大学、亜細亜大学、大正大学、東京工学院アニメーション科講師。国内外の短編・長編アニメーションの研究を中心に活動し、朝日新聞社「WEBRONZA」連載など取材記事・批評など寄稿多数。著書に『日本のアニメーションを築いた人々』(若草書房)『宮崎駿全書』(フィルムアート社)「『アナと雪の女王』の光と影」(七つ森書館)、編著に『マンガで探険! アニメーションのひみつ』全3巻(大月書店)など。

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